オワハラの意味とは?
「オワハラ」とはずばり「企業側が内定を出した就活生に対して『就活を終わりにしろ!』と要求すること」ことです。
2015年頃から盛んに使われ始めた用語であり、流行語大賞にもノミネートされるほどの一般的な用語にまでなりました。
2010年代中盤から「セクハラ」に加え「モラハラ」「パワハラ」「アルハラ」などの「●●ハラ」という用語が沢山生まれてきましたが、その中で作られた言葉だと言えるでしょう。
オワハラという言葉はすっかり就活界隈に定着した感じがしますが、そもそもなぜ企業側はオワハラをするのでしょうか?
まずは就活市場というマクロ環境からみていきましょう。
オワハラする理由①就活市場は売り手市場である
2008年のリーマンショックからしばらくは「冬の時代」と言われ、派遣切りといった言葉に代表されるように有効求人倍率がグッと下がりました。
金融機関の中には不況の影響から内定取り消しの措置を取らざるを得ない会社もあったりと、新卒学生(売り手)にとっては非常に厳しい就活環境でした。
しかし徐々に景気が回復するにつれて企業側も再び採用に力を入れるようになり、採用人数の拡大を始めていきました。
ここ数年は求人ポジションに対して学生の数が一定以上下回っており、学生側が比較的職場を選びやすい「売り手市場」とされています。
「どこかしらには絶対就職できるのだから、せっかくなら色々な会社を見てみよう」と思うのが学生側としては自然な心理ですが、企業側としては1人を採用するのに大きな費用を掛けているわけで、内定を辞退されようものならお金をドブに捨てたのと同じようなもの。
他の企業の内定を受諾して自社を蹴られてしまうリスクを減らすために「他の選択肢は探すなよ」と企業側は学生に釘を刺すわけですね。
オワハラする理由②学生の意思決定はミズモノである
学生は往々にして意思決定がフワフワしがちです。
というのも、これまで人生を賭けた意思決定をしてきた回数が絶対的に少ないからです。
ここでいう「人生を賭けた」意思決定というのは、自分の食い扶持は自分で作るということを指します。
確かに大学受験等で人生の意思決定をしてきたことは事実ですが、大学の授業料は両親が払ってくれる場合が多く、結論として「人生を賭けた」意思決定とは言い難いです。
しかし就活というのは「自分が給料をもらう先を選ぶ」ことであり、これからの人生を大きく規定する「職場」というものを探す旅でもあるのです。
企業側はそれを理解しているので、真剣に学生を選考します。
一方で学生側は就活以前に自分の人生を賭けた意思決定をしたことが少なく、その重みを分かっていません。
だからこそ学生は感情論や印象論で自分のキャリアを決めてしまうことが多く「何となくかっこいいから」「あの会社と比較して風通しが良さそうだから」といったフワフワっとした理由で意思決定をしてしまいがちです。
特に最後に出会った企業の印象は頭に残りやすいため、学生が内定を獲得した後に追加で他の企業の選考を受けられることは、学生の意思決定が揺らぐリスクとなり得る事象なのです。
こういったフワフワした学生を自社に繋ぎ留めておくには「他の会社の選考を受けさせないこと」に尽きます。
だからこそ内定を出した企業は学生に対してオワハラをして、他の会社の選考を受けないように念を押すのです。
オワハラの違法性
しかし、オワハラは決して褒められた行為ではありません。
褒められる行為でないことは勿論のこと、場合によっては刑法上の罪に該当することも考えられるため、オワハラをすることは企業側にとってリスクでもあるのです。
オワハラが罪に問われるパターンとして考えられるのは下記の通り。
①脅迫罪
私生活での安心感や、意思決定の自由を守るために規定されているのが脅迫罪です。
就活でいえば「内定を辞退したら他の企業に言いふらして業界内で悪評を広めてやる」「内定を辞退したら損害賠償を請求する」などといったことを採用担当者が学生に言おうものなら、明確に脅迫罪が成立します。
ただし企業側もバカではありません。
こういった明確なことは言わずにプレッシャーを掛けてくることがほとんどです。
「君たちの就活は今日を以て終了したと思うので~」「他の企業はもう眼中にないと思いますが~」といったやんわりとした圧力についても、場合によってはオワハラと認定されることもあります。
②強要罪
本来したくないことを無理やりさせられた場合、強要罪に問われる可能性があります。
例えば「今この場で他の企業の内定を辞退するように迫られた」「内定を辞退する際に謝罪文を書かされた」などという場合は立派な強要罪です。
昭和の時代にはこういった強要罪まがいの嫌がらせは横行していましたが、現在でも特に体育会系の日系企業ではこういった風景が良く見られます。
某証券会社は内定を辞退した学生にお茶をぶっかけるなどと言われており、今でも過剰なオワハラがなくなっていないことが示唆されます。
オワハラのあるあるパターン
犯罪まがいの行為であるオワハラですが、企業側として学生に迫ってくるパターンはいくつかあります。
ここに書かれているような対応をされた場合は、多かれ少なかれオワハラに該当するため、学生側としても身構えて臨む必要があります。
オワハラあるある① 他社の選考辞退を迫る
「ウチが第一志望というなら、今すぐここで他社に電話して選考辞退を伝えられるよね?」
こういった文句を面接官が吐いてきた場合、高い確率でオワハラとして認定されます。
もっとひどい場合は「他社の選考を辞退したら内定をあげるよ」とトレードオフで条件提示をしてくるパターン。
学生側としては立場がないですから、泣く泣く他社の選考を辞退して内定をもらうほかないような場面もあると聞きます。
しかしこれは一歩間違えれば新興宗教やマルチ商法などと同じ手口であることは覚えておきましょう。
こういった怪しい商売をしている人たちは、冷静さを失っているうちに意思決定をさせようとしてきます。
一時的にテンションが上がっている状態、動揺している状態を利用し、自分に有利な契約をさせようとしてくるのがマルチ商法の常套手段です。
「他社の選考を辞退しないと、わかってるよね?」と学生が言われたら、多かれ少なかれ動揺するはずですし、正常な意思決定ができるメンタルではなくなると思います。
だからこそ、一歩冷静になって立ち止まって見ることが大切です。
そもそもこういったオワハラをしないと自社に学生を繋ぎ留めておけない企業は、元々入社しない方が無難だと考えた方が良いでしょう。
本当にいい会社なら放っておいても学生は他社の選考を辞退するでしょうし、仮に内定を断ったとしても応援してくれる姿勢を見せてくれるはずです。
オワハラあるある② 選考期間を余計に引き延ばす
面接が4次、5次と長く続いている選考フローを取っていたり、敢えて競合他社のインターンシップに被せて日程を提示してきたりする場合も間接的なオワハラと言えます。
あくまで間接的なので直接オワハラ認定することは難しいですが、企業側としては「他社のインターンシップを選んだ場合は、その学生はウチに来る見込みが低いのだから落とせばいい」と判断できるため、割とよく使われる手口であるのは間違いありません。
学生側としては非常に対応の仕方に迷うオワハラの手法ですね。
オワハラあるある③ 内定者課題を死ぬほど出してくる
内定した途端に「●●と●●の資格を半年後までに取得してください」「週1回の内定者懇親会に参加してください」といった義務を課された場合、それは十中八九オワハラを含んでいることに注意しましょう。
こういった重い内定者課題を学生側に課すことで、他の会社の選考を受ける時間や体力を削ごうというのが魂胆です。
かつ学生側に単純接触効果が働くため、知らず知らずのうちに自社のこと好きになってくれて内定を断りづらくさせる効能もあります。
第一志望の会社ならば別に構わないと思いますが、そうでない会社で他の会社も見たい場合は負担以外の何物でもないですよね。
オワハラあるある④ 内定辞退をさせないよう高圧的な態度を取られる
「何で内定辞退するの?君は社会人としての義理がないの?」と言ったように、内定辞退をしたい旨を伝えたとたんに態度を豹変する企業は非常に多いです。
今更高圧的に当たられても学生側の意思決定は変わらないのにも関わらず、企業側はなぜこのような態度を取るのでしょうか。
ずばり、採用チーム側の査定に響くからです。
内定辞退をされると採用チームは上司からこっぴどく怒られるほか、マイナス査定に繋がってボーナスを削られることもしばしば。
採用チームの人間からすれば、下手に内定辞退をされると自分の収入が下がることに直結するため、何としても食い止めようと必死になるわけです。
一番ひどいと「内定辞退してもいいけど、金輪際君の大学からは採用しないよ?後輩に迷惑かけることになるんだよ?」という脅しをかけてくる場合もあり、学生としては頭が真っ白になってしまうこともしばしば。
オワハラへの対策方法
企業はあの手この手を使ってオワハラを仕掛け、学生を自社に繋ぎ留めようと必死になっています。
学生側として丸腰でいるとつい企業側の言いなりになっていしまい、後悔の残る就活となってしまう可能性も高いでしょう。
では学生側はどのような防具をまとって企業からのオワハラに備えればいいのでしょうか?
内定の森としてのおすすめオワハラ対策方法を以下に挙げておきます。
内定承諾は学生側に法的有効性がないことを認識する
内定承諾をする=学生側は不当に内定辞退できないと思いがちですが、これは違います。
法律的には雇用される側の保護のため学生側に有利な設定がされており、学生側は自由に内定を辞退することが可能なのです。
「内定承諾書にサインしたよね?辞退したら賠償請求するよ?」という脅し文句は法律的に破綻しているのです。
かつオワハラは一歩間違えば脅迫罪や強要罪に該当するため、企業側に言い訳の余地はありません。
法律的には何をどう考えても、就活生が有利であることは忘れないでください。
「法的な措置を取る」という類の言葉に弱い日本人ですが、法的にも就活生は守られています。
いざという時は逃げ出したっていいくらいの気持ちで、オワハラを受けた際は強気に臨むことが必要です。
やんわりと嘘をついてかわす
就活はキツネとタヌキの化かし合いです。
企業側はいかに自分たちが魅力的であるかを盛り盛りでプレゼンし、学生側はいかに自分が優秀な人材であるかを盛り盛りでプレゼンする場が就活です。
すなわち就活には嘘が蔓延しているのです。
しかしそれは社会人になったらもっと増えます。
断る際も「前向きに検討します」と方便を使い、既に仕事をお願いすることを決めている際も「もっと条件を良くしてくれないと他に頼んじゃうよ?」と相手を試したりするのがビジネスの場です。
その予行演習だと思って、やんわりと嘘をついて波風を立てないように攻撃をかわすのも一つの対策方法です。
内定者懇親会と他社の選考が被ってしまった場合は、不謹慎ですが忌引きを使ったり、学科の研究発表会があることを理由にしたりして何とか抜け出すといったワザを身につけましょう。
やんわりと攻撃をかわしながら自分の望むような結果を作っていくことこそ、ビジネスパーソンとして非常に重要なスキルなのです。
常にボイスレコーダーを仕込んでおく
いつオワハラされるか分からず不安だという人は、常にボイスレコーダーを仕込んでおくというのも心理的に安心をもたらしてくれるでしょう。
ボイスレコーダーは法的な証拠としても使えるため、もしあからさまなオワハラをされた場合は「この音声を警察に届けます」と逆に強気に出てみてください。
企業側もそれ以上の深追いはしてこないはずです。
企業側も自分たちがしている行為に負い目を感じているはずですので、やはり法的な措置に出られるのには弱いのです。
現に内定の森の知り合いの就活生の中には、かなり重いオワハラに悩まされていた人がおり、その人もボイスレコーダーを利用してオワハラをくぐり抜けていました。
度々オワハラを仕掛けてくるメンターに対して「ずっとあなたの音声を録音していました。これを提出して訴訟しますよ!」と強気に出たことで、すっかり相手は意気消沈して内定辞退を受け入れてくれたそうです。
ここまで勇気を持った行動ができるかは別ですが、やはりお守りとしてボイスレコーダーを持っておくというのは非常に有効な一手だと思います。
オワハラまとめ
以上、オワハラの基礎的な情報や常套手段、それに対する対策方法をまとめてみました!
皆さんももしオワハラに遭ってしまった場合は、この記事を思い出して強気な態度で対抗するようにしてください!