東大・京大・一橋・東工大・早慶上智・旧帝大の学生が就職活動を進めていくと、おそらく99%の確率で認知するであろう外銀。
15年ほど前から「コンサルティングファーム」「投資銀行」といった高収入アドバイザリー会社が就活では人気を博しています。
勿論志望者は多いですし、企業側が要求してくる学生の水準もすこぶる高いのは事実。
したがって”就職偏差値”が高く見積もられるのはごく自然なことでしょう。
内定の森でも外資系投資銀行各社の就職偏差値は上位に位置していると考えており、実際に内定の森がトラッキングを開始した2018卒以降の学生の内定承諾率がそれを物語っています。
外資系投資銀行の中でもブランド(社格)というものが巷では存在しています。
ここでいうブランドがある下位者とは「就活生が複数社から内定をもらった際に、最終的に内定承諾する確率が高い会社」のことを指します。
リーマンショック前とリーマンショック後でだいぶブランドが変化していたり、ここ数年でもブランドの変化はあります。
ただおおまかにここ5年前後の就活界隈でのブランド意識をまとめると以下の通り。
【Tier 1】米系投資銀行3社
ゴールドマン・サックス証券
モルガン・スタンレー
JPモルガン証券
【Tier 2】米系投資銀行3社
バンクオブアメリカ・メリルリンチ
シティ・グループ証券
ラザード・フレール
【Tier 3】欧州系投資銀行2社
UBS証券
バークレイズ証券
【Tier 4】欧州系投資銀行3社
ドイツ銀行
クレディ・スイス証券
BNPパリバ
リーマンショック前まで元気のあったUBSやドイツ銀行は業績悪化のために鳴りを潜め、代わりにJPモルガンが躍進しています。
JPモルガンはリーマンショックでも唯一業績が悪化しなかった投資銀行として有名であり、現在はトップティア3社の一角に名を連ねています。
BofA(旧バンクオブアメリカ・メリルリンチ)もかつてはトップティアに名を連ねていましたが、現在は少しブランドが劣ると見られている感があります。
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーはリーマンショックで業績が悪化したものの、現在も人気のハウスとして君臨しています。
外銀各社の詳しい特徴や性格を知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
今回はこのうち、上位3社に絞って解説を深めていきましょう。
外資系投資銀行のうち以下の3社は非常に人気が高いです。
ゴールドマン・サックスは世界最高峰の投資銀行として名を馳せており、就職偏差値でも最高位に位置しています。
アメリカ合衆国の政権内部にOBが食い込んでいるほか、Fintech関係のスタートアップのCFOにOBが就任したりするケースも非常に多いです。
日本でも多くのOB・OGがビジネス界の重要なポジションに就いています。
■金光碧 氏 (BitFlyer CFO)
■犬飼茂利男 氏(クックパッド CFO)
■仲暁子 氏(ウォンテッドリー CEO)
■金坂直也 氏(マネーフォワード CEO)
■瓜生英敏 氏(ビザスク CFO)
■小泉泰郎 氏(FiNC CFO)
GSに野心的な人が集まってきやすいのか、それともGS出身者が重んじられる世界になっているのかは分かりませんが、名だたるベンチャー企業の経営陣に食い込んでいることがよく分かります。
気になる社風なのですが、外資系であるにもかかわらず結構日系色の強いハウスとして知られています。
外資系投資銀行の中で、一番チームワークを重視するウェットな社風と言えるでしょう。
飲み会やパーティーの開催も多いほか、女性社員が多くひしめいていることも特徴的であると言えそうです。
それは何より、もう20年近くも日本支社の代表を務めている持田昌典さんのカラーが出ていることに他なりません。
「持田一極集中」と揶揄する他社もありますが、そういった社風が好きな人はGSは最適でしょう。
とにかくブランドはピカイチですし、扱っている金融商品の規模は大きいです。
1930年代にグラス・スティーガル法によって、モルガン商会の証券部門が独立したのがモルガン・スタンレーの始まりです。
古くからゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、メリルリンチ等と並ぶ名門ピュア投資銀行として世界で確固たる地位を築いています。
しかしリーマンショックによってメリルリンチはバンクオブアメリカに救済合併、モルガン・スタンレーは三菱グループからの出資による救済措置を受けてました。
一時期は倒産の危機にも瀕していたモルガン・スタンレーですが、現在はその地位を回復し、JPモルガンやゴールドマンと並ぶトップティア投資銀行として輝いています。
モルガン・スタンレー出身者で有名なのは、ビジョナル代表取締役の南壮一郎さんでしょう。
米国タフツ大学⇒モルガン・スタンレーIBD⇒楽天イーグルス⇒起業というキャリアを歩まれている南さんのキャリアは、外資金融志望者にとって一つのロールモデルとなるはずです。
ビジョナルが手掛けているビズリーチは新卒就活生向けにOB・OG訪問サービスも手掛けているので、外資金融社員とコネを作りたい人は一度見てみるといいでしょう。
ほかのOB・OGで有名なのは、旧村上ファンド代表の娘さんである村上絢さん。
現在は村上ファンドの後身であるC&I Holdingsの代表を務めており、断続的に市場を賑わせています。
モルガン・スタンレー時代はマーケット部門のセールスとして活躍されていたそうです。
気になるモルガン・スタンレーの社風ですが、割と個人主義で黙々と成果を出せる人を好む傾向にあります。
何となく官僚チックな印象のあるハウスと言えるでしょう。
日本では三菱グループと合弁を組んでいることもあり、案件数は非常に多いです。
しっかりと経験を積みたい人には持って来いのハウスと言えるでしょう。
モルガン・スタンレーは旧モルガン商会の証券部門ですが、JPモルガンは元々モルガン商会の銀行部門として独立した経緯があります。
1980年代ごろからグラス・スティーガル法が形骸化していくにつれ、再度JPモルガンも投資銀行部門を持つようになりました。
こういった複雑な経緯があるため、JPモルガンとモルガン・スタンレーという似たような名前の証券会社がトップティアのうち2つにランクインしているんです。
アメリカ本国では「JPモルガン」というとメガバンクとしてのイメージが強く、日本の三菱UFJ・三井住友・みずほに当たる地位を確立しています。
JPモルガンはリーマンショックの際に、唯一業績を下げなかったハウスとしても知られています。
メキメキと頭角を現したJPモルガンは、その後トップティアとして日本でも人気の投資銀行の一つになりました。
そんなJPモルガンの社風として言えるのは、静かで落ち着いた雰囲気であるということ。
決して陰キャラというわけではなく、スマートで人間的魅力にあふれた「良い人」が多い印象があります。
同じモルガン系であるモルガン・スタンレーと少し似ているところもありますが、それよりもややアットホームな雰囲気があります。
特に新卒を大事にしようという文化が根付いているため、根気強くバンカーとして実力を高めていきたい人には持ってこいでしょう。
さてさて、このトップティア3社はどこも就職人気の高い企業であることは間違いありません。
ただ、仮に3社中で複数内定を獲った学生は果たしてどこを選ぶことが多いのでしょうか?
2018年卒学生の中では、ゴールドマン・サックスの人気が高かったです。
JPモルガンやモルガン・スタンレーの内定を蹴って、ゴールドマンの内定を承諾した人が一定数いました。
特に女性でその割合が多く、それはGSが女性でも活躍できる環境であるというブランディングに成功している証拠です。
モルガン・スタンレーとJPモルガンの人気度ですが、こちらは互角の勝負でした。
「GS・モルスタ」というくくりで見る就活生は、モルガン・スタンレーから内定が出た瞬間にJPモルガンの選考を断る人もいました。
モルガン・スタンレーと比べた際のJPモルガンの社風の良さに惹かれて、JPの内定を承諾した人もいます。
2018年卒の場合では、GS>モルスタ=JPという構図があったように思います。
2019年卒においても、やはりゴールドマン人気は強かったです。
というよりも、GSの人気が加速した年度であったように思います。
2019年卒学生の就活時から「選抜コミュニティ」という就活対策サービスが流行したこともあり、2018年卒学生と触れ合う機会が多かったためと考えられます。
2018年卒で人気があったのはゴールドマンなので、それを聞いた2019年卒も「GSはやっぱりブランド力が違う」という風に思ったのは間違いないでしょう。
選抜コミュニティについて詳しく知りたい人はコチラ。
ただしGSの選考日程が3月からと遅いのに対し、モルガン・スタンレーやJPモルガンは1月に内定を出してしまっていることもあり、GSを受けないで就活を終える人もかなり多かったのは事実。
ゴールドマンはそれなりの機会損失をしていました。
モルガン・スタンレーとJPモルガンの人気度勝負で言うと、2019年卒ではモルガン・スタンレーに軍配が上がりそうです。
ただし部門が違う場合(例:モルスタ債券セールス部門、JPモルガンオペレーションズ部門など)はそうとも言えません。
自分の希望する部門を選択した人も多く、一概にモルスタ>JPという構図があったわけでもありません。
2019年卒はGSの人気が加速したということもあり、GS>>モルスタ≧JPといった感じでしょうか。
2020年卒の場合は、逆にモルガン・スタンレーやJPモルガンが巻き返した年度だったように思います。
ゴールドマン・サックスは引き続き人気であり、同じ部門から内定が出たらGSを選択する人が8割だったのは事実です。
ただし、例えばJPモルガンから内定が出てしまった時点でGSの選考を断ってしまう人も増加傾向にあったように思います。
2020年卒からゴールドマン・サックスもウィンター選考を始め、1月~2月に内定を出す戦略にシフトしました。
ただその効果があったかどうかは検討の余地が必要でしょう。
モルガン・スタンレーとJPモルガンの人気度勝負ですが、2020年卒はモルガン・スタンレーに軍配が上がりました。
モルガン・スタンレーのブランドに惹かれる学生が比較的多かった年度であるのが特徴的でしたね。
ちなみに2020年卒は内定者と社風のカラーの相関がよく出ています。
ゴールドマン・サックスを選んだ人は、上昇志向や自己顕示欲の強い傾向があります。
モルガン・スタンレーを選んだ人は、割とコツコツ真面目に仕事を頑張りそうな人が多いです。
JPモルガンを選んだ人は、満遍なく能力を持っている人間的に成熟した人が多い印象です。
人気度を総括するとGS>モルスタ>JPではあるものの、自分に合うハウスか否かはしっかりと精査する必要がありそうです。
日系企業も経団連による就活協定が廃止され、名実ともに入れ食い状態となった2021年卒の就活戦線。
ゴールドマン・サックスもモルガン・スタンレーやJPモルガンと同様に早期選考を始めることとなりました。
また、GSが採用枠を拡大するという戦略を取ったことで、GS内定者が飛躍的に増加したのもこの年から。
やはりGSのブランド力が凄く、中にはJPモルガンを蹴ってGSに行くような人も少なくなかった印象です。
ただ一方で採用人数を増やすということは、すなわち1人当たり給料は下がると考えるのが普通です。
特にGSは直近年度の業績がそこまで良かったわけでもないので、日本支社の人件費に充てていい金額のプールは変わっていないでしょう。
ただでさえ他の投資銀行よりもベース給料が低いGSですが(就活生はこれを「ブランド使用料」と揶揄しています笑)、今後拡大戦略を取るとすると更に給料がDilutionすることは想像に難くないです。
そう考えると、採用人数を変わらず絞っているモルガン・スタンレーやJPモルガンの給料保証のほうが良いと考える人も一定数これから出てきそうですね。
モルガン・スタンレーが圧倒的に人気を誇った年だったと思います。
この年度はマッキンゼーが採用人数を拡大した年でもあり、外銀各社はマッキンゼーに優秀な学生を取られる悩みを抱えていました。
その中で特に被害を受けているのがゴールドマン・サックスで、マッキンゼーに内定者を相当な数取られたりしています。
また、リクルーティングチームの人気度でいえばモルガン・スタンレーが高く、ゴールドマンの内定を蹴ってモルガン・スタンレーに行く決断をした学生もかなりいた印象です。
ゴールドマン・サックスがトップファームとしての人気を復活させた年と言えるでしょう。
この年は比較的多くの新卒採用枠をGSが設けたこともあり、モルスタ・JPモルガンとの複数内定者が目立った年でした。
ゴールドマン・サックスというネームブランドが強いことは間違いないですし、リクルーティングチームの評判も前年対比では比較的良好な印象です。
順調にGSが人気度で一番を獲得した年だったと言えるでしょう。
さて、この3社の人気度が微妙に変化する理由としては以下の4点があるのではと内定の森は考えています。
今回はあくまで外銀3社を比較していますが、それ以外の業界にも当てはまる示唆は多いと思います。
もし企業担当者さんがご覧になっているのでしたら、ぜひご参考にしてみてください!
地味に響いてくるのがこれ。
面接日程・インターン日程・スーパーデー日程などがカブっていたり、そもそもGSのように選考を遅くやったりすることがあると人気度にブレが出ます。
トップティア3社に関しては優劣をつけないで見ている学生も一定数おり、より早く内定をくれたハウスを選ぶ人も少なくありません。
こういった日程の”運”によって、その年の内定承諾度は微妙に変化します。
一方より早く内定をくれたハウスを選ぶ人も入れば、その逆を利用する人がいるのにも注目。
例えばGSの選考が進んでいることをチラつかせて、モルガン・スタンレーの選考を優遇してもらおうとする学生もいたりします。
こういった事例を見ていると、就活はタヌキとキツネの化かし合いであることがよく分かりますね(笑)
もっともな理由ではこれが一番大きいと思います。
外銀の採用は部門ごとに行なわれますが、その年度によってリクルーティングチームは交代します。
人事部は別にありますが、あくまでこちらは社内人事や採用手続き専門の職です。
日系企業のように毎年新卒採用を担当する部署はないんです。
とすると、部門ごとの現場社員が組織するリクルーティングチームがどれだけ魅力的かどうかが大事になってきます。
リクルーティングチームについて、一度おさらいしておきましょう。
リクルーティングチームはおおよそ5~7人程度で構成されることが多く、カバレッジ(GIG・TMT・FIG)とプロダクト(M&A・ファイナンシング)からバランスよく選出されます。
階級も様々で、ディレクター(D)~ヴァイスプレジデント(VP)が務めるリクルーティングヘッドのほかは、アソシエイト~アナリストというジュニア職から選出されます。
こういったリクルーティングチームですが、特に学生から見て「カッコいい」「こういう人になりたい」と思われる社員がいるか否かが採用の成功の鍵を握ります。
外銀志望者の学生は相対的に優秀とはいえ学生の身分なので、こういった雰囲気に流される傾向にあります。
ハウスの顔であるリクルーティングチームですが、企業側がどれだけ魅力的なメンバーを揃えられるかが重要だと言えるでしょう。
近年リクルーティングチームに加えて、もう一つ大事になるのがこれ。
YC塾・Alternative Inernships・外資就活アカデミア・FactLogic Executiveなどの選抜コミュニティでは、1つ先輩の外銀内定者がメンターとして迎えてくれます。
メンターになる人の性格は各年でマチマチですが、意外と年度ごとにどのハウスの内定者が多い・少ないがはっきりしています。
ある年はGSの内定者がメンターとして権力を握っていたり、ある年はJPモルガンの内定者が人間的に魅力だったり、またある年はモルガン・スタンレーの内定者が多くメンターをやっていたり、、、
要は当該ハウスの内定者で、魅力的な人が就活メンター界隈に多くいるとそのハウスの志望度がつられて上がります。
「こんな魅力的な先輩が一つ上にいるなら、自分も入りたい」と思うのは当然のこと。
もっと考えている就活生は「この先輩とは凄い話やすいから、入社後も色々相談できそう」とまで思っている人もいます。
一つ上の先輩の力はバカにできません。
社員、先輩と来たら次は同期。
YC塾に所属しているトップ学生だったり、サマーインターンに多く参加している”就活無双学生”だったりの就活状況は、外銀就活に一定の影響を及ぼします。
特に彼らは多くのハウスから囲い込みを受けるため、そこでマル秘情報を得たりする機会も多いわけです。
就活最優秀層が得たオフレコ情報は意外と就活界隈でシェアされるので、就活最優秀層の発信力はバカになりません。
「Aくんが〇社は激務過ぎるって社員から聞いたらしい」
「Bさんが▲社は案件の質がメッチャ良いって言ってた」
こういった情報に周りの就活生は流されたりします。
また、就活最優秀層を落としているようなハウスは「あの会社は学生を見る目がない」と判断されて回りの就活生の志望度を下げてしまうこともあります。
ハウス側からすると「バカらしい」と一蹴したくなりますが、就職市場は情報の非対称性が激しい市場の一つ。
学生はこういった周辺情報から判断するしかありません。
企業側はこういった事情を理解し、ブランディングに細心の注意を払う必要があると言えるでしょう。
ここまでGS・モルスタ・JPの3社を比較しましたが、なんだかんだで「自分の価値観に合う会社に行くのが一番いい」というのが結論です。
3社のブランド力の差は誤差であり、結局入社後にやる仕事は同じなので(笑)
ブランドの誤差にこだわりたい人はこだわればいいですし、社風にこだわりたい人は社風に、内定者の質にこだわりたい人は同期にこだわればいいです。
どこへ行っても、頑張ればある程度の未来は開ける環境にあります。
ですので後はいかに自分が頑張れるかが大事です。
自分の価値観と向き合い、希望の会社から内定を獲れるよう頑張りましょう!