外銀内定への道もいよいよ終盤。
前回のVol.10ではウィンターESについての解説をしましたが、ウィンターES及びWEBテストを通過後に集団面接を受けて合格すると、晴れてウィンタージョブに参加が決まります。
WEBテスト対策及びウィンタージョブ前面接については、サマーインターン対策のものとほぼ同じなので、ここを詳しく知りたい人は以下の記事を見てください。
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さて、外銀の本選考で一番の壁となるウィンタージョブの解説を進めていきましょう。
ウィンタージョブはサマーインターンと違い、本選考の一環として行われます。
つまりこのジョブを突破できないとそのハウスには新卒入社ができなくなるということです。
たまに追加募集として2次選考を実施するハウスもありますが、基本的にはウィンター本選考のみで内定者を出し切り、そのまま新卒採用を終えます。
要はこのウィンタージョブを突破できない限りは、外銀内定への道は閉ざされたも同然なわけです。
ウィンタージョブを突破すると最終面接である「スーパーデー」が待っていますが、スーパーデーの倍率は1.5~2倍程度です。
人数的には15人から7~8人程度に絞られるくらいの規模感ですね。
一方でウィンタージョブの場合は30~40人から15人程度に絞られます。
倍率は2倍を超えており、1つのグループから1~2人がスーパーデーに呼ばれるようなレベル感だと思ってください。
非常に熾烈な争いにはなりますが、対策と経験によって担保できるところも大きいです。
この記事をしっかり読んで理解を深めていきましょう!
サマーインターンを経験している人は既視感が強いと思いますが、基本的には同じようなプログラム構成で進んでいきます。
多くのハウスでは2~3Daysの日程が組まれており、今回は3Daysの想定で話を進めていきます。
1日目の始まりはリクルーティングメンバーの自己紹介や会社説明から開始されます。
たまにMD(マネージング・ディレクター)等の上級職の人が来て講演もしてくれたりします。
サマーインターンに参加している人は再度繰り返しの話になるので「またかよ」と思うかもしれませんが、我慢して聞きましょう。
逆にウィンターから外銀選考を受けた人にとっては「ビジネスモデル」「社風や案件の特徴」などを教えてくれるいい機会なので、耳をしっかり開いて聞いておきましょう。
外銀特有の要素であるバリュエーション(企業価値評価)についても軽くインプットがあります。
サマーインターンの場合はモルガン・スタンレーでDCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)が必須でしたが、モルスタはウィンターインターンを開催しない年度が多いため、基本的には2つの手法をマスターしておけば問題ありません。
「市場株価平均法」と「類似企業比較法」の2つのバリュエーション手法は、再度知識が定着しているかのチェックしておきましょう。
就活生レベルのバリュエーション書籍は以下にまとめています。
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昼食を社員と一緒にとった後に、いよいよジョブのお題が発表されます。
「日系大手A社に対して、買収候補先の提案資料を作成してプレゼンせよ」という課題になる場合がほとんどです。
こちらもサマーインターンと大きく変わるわけではありません。
「〇〇社が買収によって更なる成長ができそうな買収候補先を見つけて、成長シナリオを描け」ということです。
このプレゼン資料を作るために、グループのメンバー5~6人と共同作業をしていきます。
お題が発表されると同時に、〇〇社に関するPIB(Public Information Book)という公開情報が集められた冊子がグループに配られます。
PIBの中に含まれている公開情報はおおよそ以下の通り。
① 中期経営計画
「A社が今後どの事業に注力するか」という意思表示を投資家向けにするための資料。決算説明会資料とともにパワポで作られている。
② 直近の決算短信もしくは有価証券報告書
財務三表(PL・BS・CF)を中心とした財務数値の資料。バリュエーションでメインに使う
③ アニュアルレポート
日本企業であれば、社長のコメントや企業理念等が中心に書かれている場合が多い
④ アナリストレポート
各証券会社のリサーチアナリストがA社やA社の属する市場についてまとめたレポートが幾つかまとまっている
基本的に公開情報をまとめただけではありますが、いちいち企業のWEBサイトに飛んで資料をダウンロードする手間が省けるので便利です。
自社企業の現状分析で洗い出しておく項目は以下の通り。
これらをある程度網羅的に見ていくことで、成長シナリオの描きやすい事業領域が見えてくると思います。
■ A社の事業概要
「ヘルスケア事業」「飲料事業」「バイオ事業」など中期経営計画で事業分類について書かれていることが多いので、各事業の規模やビジネスモデルをざっくり把握しましょう
■ 全社方針 & M&A投下資金のキャパシティ
「X事業を今後の主幹事業にしたい」「向こう3年で計2,000億円をM&Aに投資する」といったような文言が各資料にないかチェックしましょう
■ 現状値と目標値とのギャップが大きい事業の選定
現在の売上と目標の売上値との乖離が大きい場合はM&Aによる非連続成長を挟む必要があるので、買収ストーリーが描きやすくなります
■ A社の資本政策・M&A履歴
Google検索などで過去のA社のファイナンスを調べましょう。過去のM&Aと重複する提案を避ける意味があります
■ 各事業ごとの市場・競合環境
上3つは主に「自社」に関する分析だが、もちろん市場規模・成長率、競合の量・強弱に関しても押さえておき、3Cの情報はまとめておきましょう
現状分析のゴールとしては「A社はX事業に注力したそうだから、X事業におけるシナジーが見込める企業を買収しよう!」という方針を立てることです。
またM&A投下資金のキャパシティによって、買収できる企業の規模が決定します。
3,000億円までしかMAXで出せないと中期経営計画に明記してあるのに、1兆円の企業を買収することは非常に難しいです。
何せそこまで資金を投下してまで買収する意義をプレゼンで示す必要があるので。
ある程度時価総額の上限に当たりをつけた上で、シナジーの見込める企業のリストアップに入りましょう!
現状分析で方針を立てたら、次は以下の3点に注意しながら買収候補先をリストアップしていきます。
■ 買収価格が予算の範囲内か
「時価総額+買収プレミアム」が買収価格となり、予算を超える場合は買収が厳しくなります
■ A社のX事業とのシナジーが生めるか
後述します
■ 財務健全性が担保されているか
過度な負債を抱えていないか(主に格付けを見ればOK)をチェックします
この辺りで簡易フィルターを掛けて企業をリストアップしていきます。
リストアップの仕方は色々ありますが「ひたすらググる」「SPEEDAで業界によるソートを掛けて一覧を見る」といった地道な作業が必要になります。
シナジーについてです。
市場で発生する買収形態は「水平統合」と「垂直統合」の2つに大きく分けられます。
水平統合とは「同じような業態を持つ企業が買収・合併によって一体化すること」です。
ファミリーマートにサークルKサンクスが買収・統合された例などがこれに当たります。
基本的に業界2位以下の企業2社が、業界1位に対抗するために取るべき策と言えます。
業界1位の企業でこの手法を採用すると、独占禁止法に引っかかる可能性もあるので、ジョブ段階のプレゼンでは選ぶのを避けたほうが良いかもしれません。
ただ「海外企業を買収して拠点を獲得しに行く」というような買収形態だったら、問題はありません。
電通がイギリス大手広告代理店のイージスを買収した例など数多くあります。
一方で垂直統合とは「バリューチェーンを作成した際に欠けている部分を補完する買収形態のこと」をいいます。
一般的にバリューチェーンは「生産」→「流通」→「販売」といったような表現されることが多いです。
A社において「流通・販売網は持っているが生産や技術力がない」という分析がなされたとしましょう。
その場合は、技術力に強みを持つ企業や製作メーカーを買収しに行くという方策があるわけです。
ジョブ中ではどのグループの提案も「海外へ進出する水平統合」か「バリューチェーンを補完する垂直統合」へ行きつく場合がほとんどです。
この2つのどちらかに落とし込む方向であらかじめ考えておくとジョブがスムーズに進むと思います。
ただし買収ロジックの後付けは無理くりでも可能なので、現状分析もそこそこに「まず買えそうな企業に目星を付けておく」という裏技もあります(笑)
社員さんも「最悪後付けはOKだから、提案資料を作ることがまずは大事」と口をそろえて言っています。
このフェーズでどれだけ良さげな企業を見つけられるかが肝になってくるでしょう。
いくつかリストアップした企業の中から、今回買収する企業を1つに絞ります。
絞り込む際には追加で以下の3点を見ておきましょう。
■ シナジーの具体化
「具体的にA社と買収先のどの部分が噛み合っているか」をプレゼンで語れるくらいに言語化できるか
■ 売上・利益・成長率などの財務数値は良いか
同程度の時価総額や事業規模の企業が2社ある場合、より財務数値に優れる企業を買収したほうが良いことは自明
■ 株主構成
創業者一家やA社の競合が買収先の大株主である場合、実際に売ってくれない可能性があることに留意
ザっとこの辺りを見ておきましょう。
提案資料のキモになる部分なので、この辺りのロジックは逐一グループ内でコンセンサスを取って進めていくのをお勧めします。
株主構成に関しては、株主が分散していたりファンドや金融機関が大株主だったりする場合だと、買収可能性は高いと見て問題ないです。
また、株を手放したがりたくなさそうな創業者一家や競合他社が大株主だった場合でも例外はあります。
「過去にM&Aに応じかけて結局頓挫した」といったような事実が日経新聞などから見つかれば、それをファクトに「買収可能性はあるのではないか」と仮説を立てることは可能だからです。
もしその場合は、そういった過去の経緯もプレゼンに含んでおきましょう。
ようやく登場したバリュエーション。
Excelをゴリゴリ回します。
外銀のインターンでは財務知識が問われると思いがちですが、実際はそこまで評価に比重が置かれているわけではありません。
そのため何がなんでも自分がチーム内でバリュエーションを担当してアピールをしなくてはいけない、ということはありません。
買収シナリオのロジック組み立てだけでも十分なアピールになります。
ただしサマーインターンに比べて周りの学生の知識レベルも上がってきていることもあり、余りにも財務知識に乏しいと思われると落選してしまう可能性もあります。
そのため、サマーインターンの時よりはバリュエーション担当に積極的に手を上げるようにしましょう。
イメージ感としては、1社どこかで”練習”としてバリュエーションを担当してExcelテンプレートを作り、それを他のハウスでも使い回すのが良いと思います。
バリュエーション担当がそのまま継続で担当することが多いです。
Excelで買収価格を弾き出した後は、買収に必要となる資金をいかに調達してくるかが鍵となるわけです。
A社のバランスシートを見てD/Eレシオや現預金を把握し、どのような調達スキームを組むといいかを考えましょう。
資金調達の方法としてメジャーなのは以下の4つ。
① 現預金
手元にあるキャッシュで全て賄えてしまうならそれがベストだが、ある程度の現預金は残す必要があるので注意
② 銀行借入
商業銀行から借金することによる調達手法
③ 社債の発行
A社が社債を発行し、投資家に購入してもらうことで資金を得る調達手法
④ 株式の発行
A社が株式を発行し、投資家に購入してもらうことで資金を得る調達手法
上から順に調達方法を考えていくのがオススメです。
できれば株式の発行までは踏み込まないほうがジョブレベルの提案では無難でしょう。
というのも新規株式を発行するとなった場合はEPS(1株当たりの純利益)が希薄化してしまいます。
既存の株を保有している投資家から「俺の持ってる株の価値が目減りするじゃないか!」と意見が出るのは必然です。
間違いなく質疑応答でも訊かれると思います。
その際に「この買収によってこれくらいの成長するので、一時的に希薄化しても後々回復してプラスになります!」とまで反論を用意しておく必要があるわけです。
ジョブにおいては、ここまでの反論を考えるのが時間的に結構厳しかったり、論拠に乏しくなってしまう場合がほとんどです。
できれば社債の発行までで押さえておきましょう。
借入や社債での調達方法を考える際に注意すべきポイントは「D/Eレシオが上がって格付けが下がってしまわないか」という点です。
格付け(≒会社の信用力)が下がるとその後の資金調達がしにくくなるリスクもあるので、安易な負債調達は要注意です。
反論として類似企業の格付けやD/Eレシオをリスト化してみて、仮に今回格付けが下がったとしても業界平均的には問題ないということを示すといいでしょう。
過去のA社の資金調達案件を見て「負債をこれだけ使って調達しても格付けダウンしなかったので今回も大丈夫」という論拠を添えるのもいいと思います。
買収候補先の絞り込みと被る部分もありますが、買収した後に具体的にどのように変化するか、を述べる必要があります。
買収した後の財務諸表の様子(定量的視点)と成長シナリオ(定性的視点)を合わせて用意できておくといいと思います。
1日目で現状分析・買収先のリストアップ、
2日目(徹夜込み)で買収先の絞り込み・バリュエーション・資金調達、
3日目(午前のみ)にブラッシュアップ、
という形で進めると無事提案資料が完成します。
3日目の午後からは、いよいよ提案資料をプレゼンするフェーズに入ります。
おおよそ自分が重点的に担当したスライドを話すことになると思いますが、基本的には「現状分析」「買収先のリストアップ・絞り込み」あたりの上流部分を話すのをおすすめします。
その理由としては単純に話す量が絶対的に多くなるのと、買収ストーリーのロジックの説明のほうが評価されやすいという点です。
バリュエーションや資金調達の細かい部分は、プレゼンテーションの制限時間内に話すことはまず不可能だと思っていいです。
また質疑応答に関しても、ロジック面70%・バリュエーション30%くらいの割合で訊かれることが多いというのもあり、ロジック面を話すといいと思います。
質疑応答で的確な回答ができると評価に直結するので、絶好のアピールポイントだと思って回答しましょう!
ここまでが終わるとヘトヘトになっているはずですが、夕方~夜にかけてはお酒も交えた懇親会が開催されます。
ご飯やお酒もほどほどに、社員さんと積極的にコミュニケーションを取っておきましょう!
また、多くのハウスで提案資料に関する順位発表があります。
ジョブで優勝したからといって内定に直結するわけではありませんが、景品ももらえたりするのでぜひ頑張ってください!
ここまでザっとウィンタージョブのフローを解説していきましたが、では結局何が合否を分けるのでしょうか?
外銀内定者の顔触れを観察してみると、以下のような共通点があることが分かります。
①チームの中で上手く自分のバリューを発揮できているか
リーダーでなくとも、自分のやるべきことを認識してアウトプットを上げることができるか
②人当たりが良さそうか
変にマウントを取り合ったり喧嘩することなく、メンバーと気持ちいいいコミュニケーションを取れるかどうか
③ある程度の財務知識・ビジネス思考があるか
EV/EBITDAやD/Eレシオといった財務知識を理解したうえで、買収価格や調達スキームの考察ができているか
①に関して「リーダーでなくとも」と書きましたが、大抵の場合はリーダーが評価されやすいです。
「他の学生への仕事の振り方や姿勢を社員にアピールできる」
「買収ストーリーのロジック構成を主導して思考力をアピールできる」
「質疑応答でも必然的に発言量が多くなる」
といった要素は、間違いなくリーダーのみに許された特権でしょう。
ただし外銀のウィンタージョブでは「リーダーやりたがり屋」「マウント取りたがり屋」の学生が紛れている可能性が非常に多いです。
特にサマーインターンの参加実績が良かったりすると、その実績をおっぴろげて「俺が/私がリーダーやります」といった態度を見せてくる人も多いです。
だいたいの場合そのような学生はクラッシャーで頑固なので、仕切りたがり学生がいた場合はリーダーを任せておきましょう。
そして、サブリーダーとしてチームを上手くまとめる役割を担うのが賢明です。
それは社員さんも見ていれば分かるので、場を上手く回すサブリーダー像を演じられればしっかり評価してくれることでしょう。
以上、ウィンタージョブに関する解説でした!
しっかりと対策を積んだうえで、次のスーパーデーに進めるよう頑張りましょう!
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